Love at First Sight



Jerome Pradon's fan site


概要

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こちらはオペラと旅行記を書いている方のサイトののページに当時観劇されたレビューがあります。貴重な日本語のレビューです

雑記

ジェローム演じる Guillaumeはいわゆる敵役 ヒロインを巡る3人の男のなかで一番キャラがわかりやすい

もう一人の男、ニセ MartinことArnaudはわかりやすい 戦友の未亡人に一目惚れ(?)して、そのままずるずると居着いた 別れたくないからウソを重ねる わかりやすい

反対に一番分からないのが Martin 妻を好きでなくて、政略結婚がいやなら、何で帰ってきたんだ 土地のために帰ってきたというなら、それは政略結婚させた親戚筋と 考え方は変わらんじゃないか 人のこと批判できんぞ!! 共感できん。

あんたが帰ってこなければ、まあ丸く収まっていたのに

 

ところでGuillaume 思いっきり力入れてヒロインに告白したら ”あなたを愛すくらいなら死んだ方がまし”とこれまた力一杯ふられている あまりのふられようで、”可哀想に思いっきしふられてやんの” と いつもここの所を聞くと、可哀想すぎて笑い転げてしまう   (反応変ですか?)

 

Making of MARTIN GUERRE

1998 PAL VHS Martin Guerre - A Musical Jouney

ミュージカル制作メイキング映像が当時VHSビデオで出ていたものです 今でも海外Amazonの中古で出ていますが、PALでビデオなので日本の普通のビデオデッキでは再生できません。PAL対応再生機または変換してくれる業者に頼む必要があります。

   

yoputubeに8個に分けてアップしてくれている人がいます

Making of Martin Guerre 感想

本当にギヨームのダンスはさるなのか、その謎がついに明かされる(うそ)(注 ダンスシーンの写真でジェロームのポーズがなんとなく さるっぽかったから、当時言った冗談です)

当然字幕無しですから、ヒヤリング能力が試されます(汗) 作詞・作曲家などの製作者が一杯話していますが、その音声に 舞台映像がかぶって映った時には、誰もそんなもの聞いちゃいません

ギヨームを探せ!

  • ギヨームはこの2つでは踊っていません
  • 結婚式のダンス
  • ニセマルタン帰還お祝いダンス

当然と言えば当然です、ギヨームはこの2つとも苦々しく思っているはずで間違っても歓迎などしていませんからね。

I will make you proud(これは公式にある動画と同じものでした)の後に、ナイフのダンス(虐殺練習ダンス)があって、ここでギヨームは中心で踊っていました  ・・・さる?・・・凶暴なさる?

ギヨームってひげ面だし、眼光鋭く睨んでるし、そり込みも入ってるし(笑) まさに悪役面です、すっごく凶悪な顔してる・・・そりゃ女の子に嫌われるって

リアル・シャイニング面で虐殺のダンスを踊る凶暴な・・さ(以下自粛)

マルタン出奔の理由

CDの歌詞だけではよく分からない、というか理解できない一番の点がマルタンが妻にまったく触れないだけでなく、逃げるように村を飛び出し参戦した理由でした。 私なりに色々な理由を考えていたのですが

  • 1 叔父の策略による”政略結婚”が嫌だった
  • 2 好きでもない女と結婚させられたので、そんな気になれない
  • We're both too young for this と言っているので、あまりに幼くて・・・って一体何歳の設定なの?
  • 4 邪説?・・・そもそも女性に興味がない・・・・でも16世紀の話にそう言う設定を入れるのは・・現代物ならあり得ると思うけど、まさか???

メイキングで分かったこと

  • ○ マルタンは17歳
  • ○ 自分が人と違う事を薄々感じて隠そうとしていたが・・・説明の中にsexual identityという言葉が出てきたので、つまりは上記の4番の説が理由のようです
  • ○ 屈辱的な扱い(ギヨーム達にからかわれてというか、いじめられてる)に耐えかね、ある日村から逃げ出す

絶対邪推だと思っていたのが、本当の理由だったとは、、、歌詞にそんな内容出てきましたっけ?英語力のなさがバレバレで・・・ もっともCDはハイライトなので完全版の歌詞の中になら出てきたんだ・・という苦しい言い訳は通じない、よね(苦笑)

追記

ある方から(日本人1人、イギリス人1人) マルタンは若すぎて(子ども)だったので、結婚や愛がわかっていなくて、自分のやりたいことはこんなじゃないって思い飛び出したのではというご意見を頂きました。

I'm Martin Guerre

このミュージカルの原型は1991年頃にフランス語で書かれたそうです、今回英訳するに当たって、作詞家がI'm Martin Guerreの曲の中で、ここがうまくいかなくてと説明しています。

原曲は "Oui, je reviendrai" と言ってるそうです。(情報 さわさん) 直訳が "Yes, I will return."  でも作詞家は、曲に載せた時にこの歌詞が気にいらなかったようで、 他にも "Yes, I will come home." "Yes, I will be back."と実演付きで歌ってくれます。でもどれも気に入らない様で、曲に載せた時にこの歌詞ではlousyって。

・・・わたしにはみんな同じに聞こえて、なにがいけないんだか、違いが分からない・・・

結局は直訳をやめて”Look, it's Martin Guerre”になったようです

村人に今は出奔するけど、必ず帰ってくる、その時には見違えるようになってやる、”見ろ、マルタンだ、以前とは違いあんなに立派になったんだ、と!(超・意訳)”という感じの歌詞に変更になったそうです

ギヨーム振られる

CDと歌詞が違っている部分がありました ちゃんと聞き比べるともっとあるのかもしれませんが

ギヨームがBertrandeに思いっきし告白して、思いっきり振られる所

  • CDは
  • ”あなたを愛するくらいなら、死んだ方がましよ!”(意訳)
  • --Love Guillaume? I would rather I were dead
  • メイキングでは
  • ”あなたとなんて絶対寝ないわよ!”(思いっきり意訳)
  • -Love Guillaume? I will never share your bed!

どっちもすごい振り方だけど・・・寝ないわ(怒!)って、ものすごいセリフだ 個人的には”死んだ方がまし”の方が好きです

くらくとんさん特別寄稿

くらくとんの雑記帳(注 リンク切れです、多分別の場所に引っ越しされたんだと思いますがまだ見つけられません 2019年)の過去記事にMartin Guerreをご覧になったと書かれていたのを検索で見つけて、ジェローム版をご覧になったと早とちりして是非に感想をお聞かせ下さいとお願いしてしまいました。

くらくとんさんがご覧になったのはジェローム達初演オリジナルキャストが降りた後のセカンドキャストの'97年7月から12月だそうです。でも実際にご覧になった方にしかわからないこのミュージカルの数回の手直しや演出の違いや元になった史実などとても詳しいお話をしていただけました。

初演~オリジナルキャスト(ジェローム達)が降りるまで 21 June 1996 to 14 June 1997

ここの中に ファーストとセカンドバージョン (たぶん他にも細かい手直しあり)

ここまでが”赤いCD版”です。ジェロームの出演しているCDです

メンバー交代(David Shannon達) 16 June 1997 to 28 February 1998 くらくとんさんがご覧になった時期でサードバージョン(初演ファ イナルバージョン)この間に変更はなし
UK Tour 28 November 1998 to 7 August 1999

この2つがリニューアル版の”黒いCD版”です

US Tour 17 September 1999 to 8 April 2000

Martin Guerreレビューと元となった史実に関してのお話 by くらくとんさん

私もジェロームのナマ舞台は観たことがありません

Martin Guerreのメイキングビデオ、JCSのDVD、レミゼ・コンサートビデオでお目にかかった程度です。 英語+外国語を解する俳優さんは、ヨーロッパでは活躍の場が広いようでいいですね。 特にロンドンミュージカルの場合だとEPツアー時にキャスティングされるようですし。

"I Will Make You Proud"は私も好きな曲です。

低音のイントロからラストの高音と、Martinの曲の中でも音域が広い歌なので、 ジェロームの声の良さ(裏返っちゃうのは別)がよく出ていると思います。 私が観たバージョンのギヨーム役はDavid Shannonで、イントロの低音部がちょいとつらそうでした。 (個人的には好きな俳優なんですけどね)

JCSのユダ、好きです。

ビデオ版の演出のユダはジェロームがぴったりではないでしょうか。 カヤパに髪の毛をつかまれるシーンでは、 「イタタタタッ! (気にしてるんだから)髪をひっぱるのはやめてくれえっ!」 と心の声が聞こえてきそうでした(笑) 失言、スミマセン。

前置きが長くなりましたが、そろそろMartin Guerreの話題に入ります。

私が舞台を観たのは'97年7月以降なので、 オリジナルキャストの降板直後のようです。 く~、残念っ!

'97年7月から12月まで観続けたワケですが(その翌年'98年2月にクローズ)、 その間に変更はありませんでしたので、 私が観たバージョンが初演時のファイナルバージョンになります。 その後、曲の大半を変更してリニューアルさせて再演(英国内ツアー)。 アメリカ上陸までこぎつけますが、地方でのトライアウト中でクローズ。 ブロードウェイにはたどり着けず(^^; どうせならファイナルバージョンで米国進出してほしかったですね。

ジェロームが'97年6月まで出演していたのであれば、 セカンド・バージョンまでかと思われます。 いずれにしても、オープン後にこれだけちょくちょく手直しされて、 キャストの皆さんも大変だったことでしょうね(^^;

しおしづさんのサイトに参照されている他の方のレビューも読ませていただきました。(注、2019年現在ほとんどのレビューがリンク切れなので載せていません)

やー、辛口ですね(^^;

私などは絶賛なんですけど。 人間の数だけ感想・評価も様々。 舞台の好き嫌いもあるでしょうし。 確かに「レミゼ」のバリケードを彷彿させるようなセットや、 「ミス・サイゴン」を思わせるようなフレーズがあったりと 二番煎じ的要素は見られますが、 それら前作を観た者にも新鮮なところは多々あるように感じられる作品なんですよ。 結果としてロングランにつながらなかったのは皆さんのような批評が大多数を占めていたということなんでしょうね。 とても残念ですが。

個人的には「レミゼ」「ミス・サイゴン」よりも「マルタン・ゲール」が好きです。 というか、「レミゼ」に関してはなぜあの作品があんなに絶賛されているのか疑問。 ストーリー全体の流れが全然理解できません(^^;

話、戻します。

「マルタン・ゲール」は、3回手直しされたと各メディアで記述されていますが、 細かく考えるともっとされているように思われます。

まず、 メイキングビデオにて。 オケとの合同リハの際、"Where's The Child"のところでギヨームがソロをとっている箇所がありますが、 これがCDになると、ベルトランドとマルタンのかけあい(子供ができないことの理由について)

  • ベ「みんなが言ってることはウソよね」
  • マ「ボクたちはまだ若すぎるんだよ」
  • ベ「少なくとも私は努力したわ!」
  • と夫婦ゲンカになってます。

"Martin Guerre"の歌詞もCDとは一部異なっています。 しおしづさんも書かれていたように、 ギヨームがベルトランドにふられるシーンの歌詞もビミョーに変わっていますよね。

舞台中継は観客も入っていることから、おそらくプレビュー時のものと思われます。

ここではベルトランドは 「あなたと結婚したって、一緒に寝ないわ!」 と言っていますが、後日発売されたCDでは「死んだほうがマシ」となっているので ここでも細かい変更。

これらを修正と数えるならば、計4回になりますね。

  • ・プレビュー版、
  • ・オープン時(=CD)
  • ・そしてその後に2回手直しされている計算かと思われます。

話がややこしくなるので、クローズ後のリニューアル版についての記述はしません。 (というか、リニューアル版では全然違う作風になってしまってますので) Amazon等で現在入手できるCD、楽譜はリニューアル版のみのようです。 興味があればどうぞ。ただしおススメはしませんが(^^;

しおしづさんがお持ちのCDはハイライト版とおっしゃっていますが、 ブックレットの表紙が赤い背景地に「Martin Guerre」とデカデカと書かれた22曲収録されているものであれば、 ハイライト版ではないと思われます。 「レミゼ」同様に場繋ぎ的な歌は省かれていますが、これはCDの容量の関係でしょうね。

実はこの場繋ぎ的な歌というのがほとんどギヨーム絡みのシーンなんですけど(^^;

オープン後に手直しされた正確な時期は、私には分かりません。 ストーリーの構成に変更はないようですが、演出、歌が大きく変更されたところがあります。 これが「手直し」と呼ばれている部分だと思われます。

まず大きく変わったのが、

CDにある、村の三婆による"Sleeping On Our Own"がカットされ、 代わりにピエールとベルトランドの母のデュエット(かけあい)による "Solution"が追加されました。 ベルトランドがマルタンを待ち続けていることに困り果てた二人の相談事とでも言うのでしょうか。 ここで二人はギヨームと結婚させ直そうとたくらみます。

第二幕の裁判シーンでベノワが追及される歌"Me"

ラストにベノワはアーノウドの名前を言うか言わないかのところで CDでは「I called him....... No!」(ダメだ、言えない!とでも訳しておきますか)と叫びますが 舞台では「I called him....... Martin Guerre!」となります。

ベルトランドとアーノウドの二人のことを好きなベノワが二人をかばう最大の見せ場ですね。 裁判ではベノワの証言が重要なので、 「No!」と言うよりも敢えて「彼はマルタンだ!」と言わせたことによって、その後に続くアーノウドの "I'm Martin Guerre"が勝利の宣言のようで引き立ちます。

また、CDではラストは"The Land Of The Fathers"で静かに終わりますが、 舞台ではその後に"Woking On The Land"をリプライズして力強い終幕にしています。 これがセカンド・バージョンではないでしょうか。

そして私が観ているサード・バージョンですが、

"Solution"の歌詞が若干変更されています。 マルタンはピエールの浮気相手の子供じゃないのかといったことが指摘されています。

ピエールもベルトランドの母もお互いの配偶者に満足していないけど、 とにかくカトリックとしての義務は果たした(子供は作った)ぜといった感じです。 歌詞の変更はあったとはいえ、変更前の三婆の歌と同様コミカルな感じを残しています。

それと、セカンド・バージョンでは、マルタンが出奔する前にピエールに助けを求めるシーンがあるようですが、 サードではありません。 記憶が定かではありませんが、マルタンが敵にやられた時の最後の言葉、 アーノウドに「ベルトランドにすまない("I'm sorry")と伝えてくれ」が、 私が観たバージョンでは「愛している("I love you")と伝えて」に聞こえたように思います。

以上が、私の気がついた変更箇所(と思われる)部分です。

長くなって申し訳ありませんが、もう少々お付き合いのほどを・・・(^^; ご質問のマルタンの出奔の原因です。

まずマルタンの結婚について。

他の方のレビューでは「好きでもない相手と結婚させられた」とありますが、 私が観たバージョンでは少なくともベルトランドは「好きでもない相手」ではないように思われました。 実際、結婚式のシーンではマルタンはベルトランドに優しく接しているし、

「可愛いベルトランド」とまで言っています。

ベルトランドも「仲良く暮らしましょうね」と微笑み、なかなか初々しい新婚さんぶりです。 ただ、結婚が決まる前に「もうちょっと待ってほしい」とピエールに哀願するあたりに 結婚というコト自体をイヤがっているフシがあるのも事実。

ここで史実を紐解いてみましょう。 マルタンの出生についてはよく分かっていません。 大地主でもある叔父ピエールの庇護のもと成長していますが、 舞台(サードバージョン)では"Solution"でピエールの不義の子ではと匂わせていますが

ゲール家の構成は、 両親、ピエール(父親の弟)、マルタン、妹(二人)です。

マルタンの父親とピエールは似たタイプの性格だったようなので、舞台では父親は端折られたのでしょう。 母親に関する記述はほとんど見られません。おそらく「当時の女性としては典型的なタイプ」だったためか? ちなみにピエールは妻帯者でしたが、妻が死亡。娘がいた模様。 同じく寡婦であったベルトランドの母親と数年後再婚しています。

マルタンは、背は高くてひょろひょろとした感じだったようです。 身のこなしは軽く敏捷性に優れていた模様。 (出奔後の参戦ではその能力でかなりの功績を挙げたらしい) しかし、性的成長が遅かったのは事実。 レビューでは同性愛嗜好だったのではとありますが、史実では具体的な記述はありませんが、 同性愛というよりも「女性的嗜好」だったのではないかと推測されています。 また、このように発育が遅かったため、第ニ次性徴もあったのかどうか。 不能だったのではという憶測もあります。 そのあたりがマルタンが「結婚(=子作り)」に積極的ではなかった要因のようです。

★マルタンの結婚時期。

14歳頃であったようです。 若年結婚がちな昔とはいえ、それでも当時としては「異例」の若さで結婚した(させられた)ようです。 これは、アルティガ村で大地主としての権力のあるゲール家と、 ベルトランドの生家(ロール家)の利害一致の所以で、 言ってみれば政略結婚のような感じでした。

★マルタン不能説(笑)

結婚した当時14歳なので、当然、未発達であったことは推測されますが、 その後8年もの間、子供に恵まれなかったので。 ベルトランドは既に初潮はむかえていた模様 → 結婚させるには十分だったという理由

結婚後、村人たちから「子供はまだか」と詰め寄られます。 当時としては「結婚」は成人として認められたことでもあり、 またカトリックの教えに「産めよ増やせよ地に満ちよ」とあることと、 当時のアルティガ村では自分の子供に不動産(土地)を継承していくことから 子供を産むことは結婚した者の義務でもあったワケです。 成人として神に認められた「結婚」をしているにも係わらず子供が出来ないということは、 良からぬモノが憑いていると考えられた時代です。 ところがマルタンは上にも書いたような性的に劣っていたため子供が出来ません。 そこで村人たちから制裁を受けたワケです。 これが「シャリバリ」と呼ばれる儀式です。

当時のガスコーニュ地方で流行ったもので、 結婚後、一定期間に子供を授からない夫婦がいると、村の若者たちが、 「顔を黒く塗り、女装して子供のできない夫婦の家の前で囃し立てたりした」 のだそうです。 特に当時としては「子供ができないのは夫が悪い」と見なされたので、 主にマルタンがこのからかい(仲間たたき)の標的にあったようです。 CDの歌ではギヨームを始めとする村の若者たちがワアワアとやっていますね。

聖職者からの仕打ちについては、「悪魔払い」的要素が強く、 舞台ではカトリック、プロテスタントの宗教戦争を含んだ作りになっているので、 挿入されたのではないかと思われます。 聖職者がその人間を柳のムチで打って、良からぬモノから解き放つといったものです。

制裁は夫婦共に受けます。 ムチ打たれるワケですから、身体的苦痛はかなりなものだったようです。 そして夫婦間の性的交渉を強要されます。 子供が出来るまでこの制裁は続きますから、精神的にもかなりな圧力がかかったと思われます。 ベルトランドとマルタンはこのよにうに村では肩身の狭い状況にあったワケです。 更に身体が小さかったマルタンは村の若者たちから格好のイジメの対象にもなり、 気弱だったこともあってやり返せないマルタンはますます追い詰められてしまいます。

家のために強引に結婚させられ、子供が出来ないという理由で制裁を受け、 村での自分の存在意義に疑問を感じたワケです。 折りしもフランスはスペインとの国境で戦争の真っ最中。 アルティガ村はスペイン国境に近い場所に位置しています。 肉体的、精神的に追い詰められたマルタン少年は、 戦争に赴いて一旗挙げて自分を確固たるものにして村に凱旋しようと出奔してしまいました。 というのが経緯のようです。

マルタン出奔の原因は史実によると マルタンのゲール一家は、バスク地方からアルティガ村に移住してきました。 当時は、各地域によって独特の言葉を使っていたため、 マルタンはアルティガ村で公用語として使用されている言語に馴染めなかったようです。

また、「マルタン」という名前がその地方では主にロバや家畜に付けられる名前であったので、 村人(特に同年代の少年たち)からからかいの対象になっていたとか。 一方、ゲール家の家長(マルタンの父親)やピエールとも不仲だったようです。 つまり、結婚云々以前から、マルタンは村、家からかなり「浮いた」存在であったようです。 事実上の出奔時期は、実子に恵まれて以降のことですが、 舞台では上記のようなことを脚色したものになっていると思われます。

舞台では戦争はカトリックとプロテスタントの宗教戦争に置き換えられています。 CDではカットされていますが、 "Where's The Child"ではシャリバリのシーンもあります。 (舞台では制裁を受けるのはマルタンのみ) メイキングビデオでは歌詞に「シャリバリ」と出てきていますね。

史実ではベルトランド、マルタン共にひどい仕打ちを受けているのですが、 舞台ではマルタンを孤立→村から逃げ出させるためにマルタンだけに集中させた演出にしたのでしょう。 また、ここでの村人たちの弱いものいじめに走りがちな群衆心理をうまくついて、 第二幕でギヨームがプロテスタント襲撃に持ち込むといった展開にもなっています。

史実に基づいた作品ですが、ギヨーム、ベノワについてはフィクションでしょうね。 実際はアーノウドは巡回裁判の末、死刑に処せられていますから。

で、なんでマルタンは戻ってきちゃったのかについては、 舞台では、戦争時に出会ったアーノウドとの会話の中で 「自分は村に戻る決心ができた」と言っていますからそれを実行したまでで。 その時にベルトランドともう一度やり直すとも言っています。 CDではカットされている部分です。 "Here Comes The Morning"直前のマルタンとアーノウドとのやりとりの会話です。 その中ではアーノウドの半生も語られているので、 ここをカットされているのは実に惜しい! というか、カットされちゃったがためにCDを聴いただけでは不可解な展開になってしまってます。 マルタンは劇中、ベルトランドを嫌っているというようなことは一度も言ってませんから、 レビューにあったように「好きでもない女」ではないと思いますよ。 多分、マルタンなりにベルトランドのことを愛していたと思います。

戻って来たのが遅れたのは、おそらく受けた傷を治してたんじゃないですか? (アーノウドが死んだと勘違いしたあのシーンの傷) 史実では戦争で一旗挙げたンじゃないですかね。 まあ、「男を上げた」とでもいうか、自信がついたのでしょう。 それにまさかアーノウドが自分の場所に収まっちゃってるとは思ってなかったわけだし。

身から出たサビとは言え、自分の妻を寝取られ、しかも彼女から「なんで今更戻ってきたのよ」とまで言われた挙句、 村から去られちゃうんですから、可愛そうなもんです(笑)

★どーでもイイことですが、 アーノウド(偽マルタン)は、実際はかなり狡猾な詐欺師だったようです。 ゲール家の家長として収まると、実質的な権力を使うようになり、 叔父ピエールの財産の管理にまで手を伸ばし始め、 ゲール一族の一員としてそれなりの力を持っていた叔父ピエールが 自分の座が危ないと感じて「アイツは偽者だ。だまされた」と騒ぎ始めたのが真相のようです。 歌詞にもある「本物のマルタンよりも靴のサイズが小さい」というのは事実です。 アーノウドが偽者なのではという疑念は村人たちもかなり持っていたようですが、 アーノウドにうまく言いくるめられていたようです。

「Martin Guerre」の中で一番好きなキャラクターは実はギヨームです。 だってさー。 彼はベルトランドが好きだったわけですよ。 だけど、土地持ちでなかったというだけで彼女を他の男に嫁がせられちゃって、 当の本人からはものスゴ~~く嫌われてるし、 マルタンが去った後は、今度こそ自分のものになると思ったら、 ちゃっかり偽者が現れて奪われちゃうし。 偽者だと暴いたら本人帰ってきちゃうし。 もう怒りと鬱憤たまりまくりの人生ですよ。 "I Wil Make You Proud"はまさにギヨームの怒りそのものです。 神に向かって「あんたのためにオレは立ち上がるぜ」みたいなコト言ってますが、 これは信仰に対して反旗を翻したものでもありますよね。 衣装も茶の表皮のパンツで他のキャラとは特別扱いでカッチョええです(=^^=

ギヨームのダンスシーンはメインはこの曲ですが、 アーノウドが村に現れたときに、対抗意識むき出しにしてステップを踏むところもあります。 ギヨームが踏んだステップをアーノウドが模倣できたことで、 村人たちは彼を「マルタン」だと認識するシーンでもあります。

どんなキャスティングでもいいから再演してほしい舞台です。 (もちろん、初演版で。リニューアル版は論外)

史実に比較的忠実に脚色された映画は、フランスで製作されています。 「Return of Martin Guerre」(主演:ジェラール・ドパルデュー(アーノウド役)) 英語字幕でアメリカでもビデオ発売されています。 この映画をハリウッドがリメイクしたものがリチャード・ギア、ジョディ・フォスター主演の「ジャック・サマーズビー」。 映画の冒頭で"Based on "Return of Martin Guerre""のスクリプトが入っています。

CDの赤版、黒版について、および初演版のオリジナル~ファイナルバージョンまでの しおしづさんの理解はそのままでいいと思います。 私が観劇したバージョンは参考サイトさん記載のLondon Castによるものです。 ダブル・キャストの出演も観る機会がありました。(ただしベノワは除く) 意外だなと感じたのは、ベルトランドのダブル・キャスト。 写真を見れば一目瞭然の「アジア系」の俳優なんですよね~。 (なのに、母親は西洋人) 西洋の話にアジア人がキャスティングされるとは! このあたりは、「ミス・サイゴン」の成功が関係しているのでしょう。 「ミス・サイゴン」以降、「レ・ミゼ」など同作曲者・同作詞家の一連の作品には 「ストーリー上ありえない」アジア人がキャスティングされていますからね(^^;

CD黒版(UK、USツアー版)は、聴かれたのならお分かりでしょうが、 オリジナルを大幅に変えています。 イントロもいきなり戦争シーンから始まっていましたしね。 キャストもかなり若い年齢にしてますし、 なにしろオーケストラが縮小されているので、 音的にもこじんまりしてしまっています。 メイキングビデオの最後で作曲者が 「私はストーリーの本質を理解しているから、曲を変えたり、演出を変えたりしてもMartin Guerreの本質は変わらない」というようなことを言っていますが、 ニューバージョン(黒版)がそれかと思うと、ファンとしては結構悲しかったりしますね。

舞台がオープンした後でも演出が変更されるようなことはよくあるのかという質問については、 「あることも、ある」といったところでしょうか(笑) フツーは正式オープン前のプレビュー時に観客や批評家の反応を見て手直しします。 実際に劇場にお客さんを入れて、自分たちの仕事内容を確認するというのがプレビューと 解釈してもらえれば良いでしょう。 お客さんもそのコトは承知の上で観ています。 よって、チケット代も正式オープン時のものに比べると若干安いんですよ。

演出の変更、手直しは、ロングランされているものには付き物のようですね。 まあ、何年も上演しているうちに、時代に合わせたり、演出側の気持ちが変わったりすることもあるワケで。 曲がカットされたり、台詞が修正されたりということはあります。 「CATS」「レミゼ」などでもありますよ。 舞台内容の変更・手直しは実際よくあることですけれども、演出家、作曲者だけの意向ではできません。 総元締めであるプロデューサーが首を縦に振らないことには、どんなに不満があっても手を加えることは不可能です。 そう考えると、「ライオン・キング」などではまず変更はありえないでしょう。 なんせあの「ディズニー」が版権持ってますからね(^^;

JCSを観たとき、最初はジェロームは誰だか分かりませんでしたが、なんだか声や姿がギヨームの人と似ているなあと。 急いでMartin~のCDとメイキングを確認して「あ、やっぱりギヨーム役の人だ」と分かり、スゴク嬉しかったですよ。 ジェロームってキャメロン・マッキントッシュに認められている役者さんなんだなあ、スゴイなあと思いました。

(文 くらくとんさん)

 

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